( ゚Д゚)<DEAD OR ALIVE・2

「花は新鮮でみずみずしかった。彼はそれを食べてしまいたかった。彼は花を集めながら、小さな黄色い管状の花を食べた。クララは依然として、うかぬ顔でそこらをふらついていた。彼は、クララのほうに近づいて言った。
「どうして、花を摘まないんです?」
「摘むなんていやよ。咲いているままがいいのよ」
「でも、二、三本ほしいでしょう?」
「花は摘まれたくないのよ」
「そうかなあ」
「花の死骸なんか持つのいやよ」と彼女は言った。
「それはかたくななこじつけですよ」と彼は言った。「水に入れてやれば、生えているときと同じくらい長持ちします。それに、花びんにいれてやるときれいですよ──うれしがっているように見えます。あるものを死骸だというのは、それが死骸のように見えるときだけじゃないですか」
「それがほんとに死骸であってもなくってもですか?」と彼女は言い返した。
「僕には死骸とは言えません。摘んだ花は花の死骸じゃないんです」
 クララは彼を軽蔑した。
「で、もしそうだとしても──なんの権利があって、あなたは花を摘むの?」と彼女はきいた。
「花が好きで、ほしいからです──それに、たくさんあるじゃありませんか」
「それが十分な理由になると思うの?」
「ええ。そうじゃないですか。ノッティンガムのあなたの部屋に飾れば、いいにおいがしますよ」
「そして、花が死んで行くのを見て喜べっていうのね」
「ですけど──死ぬなら死ぬでかまわないじゃないですか」
 そう言って彼はクララから離れ、青白く輝く泡の塊りのように野原に一面に咲いている花の上に身をかがめながら、行ってしまった。」
D.H.ロレンス『息子と恋人』)