( ゚Д゚)<DEAD OR ALIVE・3

「甘く、美しい死が、我々を救いにやってくる。群れの中になだれ込み、隔離された完全性にひびを入れる。清らかなる死よ、群れから逃れ、数人の生きる者を集め、それに対抗する機会を与えよ。ああ、死よ、我々を死で清めよ。我々から悪臭を取り除き、否定的人間とのがまんできない一体化から解き放してくれ。我々のためにこの牢獄を破壊してくれ。我々は、その牢獄の中で、群れなす生ける屍の悪臭に窒息寸前となっているのだ。粉々に砕け、破壊力をもつ美しき死よ。群らがる人間どもの完全なる意志を、自己にのみおぼれている虫けらどもの意志を、粉々に打ち砕くのだ。完全に一つになった、忌まわしい人間どもの塊を打ち砕くのだ。死よ、今や、お前の力を主張するがいい。今こそ、その時なのだ。彼らは、お前をずい分長い間拒絶してきた。彼らは、気違いじみた傲慢さにひたり、あたかもそれを屈従させたかのように、死と取り引きを始めてさえいる。彼らは、自らの持つ不毛化という卑劣な目的のために、これまでずっと生を利用してきたように、死をも利用しようと考えた。素早い死は、囲まれた傲慢な自己主張の目的に仕えることになっていた。死は、彼らを人類という慈悲深く独善的な虫けらどもを、《そのままの状態》にしておくために、手を貸すことになっていた。
 人類など、この世から消してしまおう。数人の人間がいればいい。清らかな死は、我々を人類から救い出す。死は、高貴で汚れなき死は、人類の鈍い無感覚になった殻を打ち砕く。ちょうど、殻に閉じこもった甲虫の、もろい甲を打ち砕くように。人類を打ち砕き、そんなものは終わりにしよう。純粋で孤高の人間──未知なる生と死に身を任せ、充足される人間が何人か現われればいいではないか。我々の不毛な一体化などは、もうよしにしよう。ああ死よ、我々を孤高の存在にせよ。我々を、卑しい社会的集団から解放せよ。ああ死よ、最後には我々を解放せよ。私を独立した存在にせよ。私を私自身にせよ。孤高の存在で、塊と化した無数の人間とは無縁の人間を教えてくれ。星のように輝き、自らに安んじている数人の人間を捜させてくれ。もう私という存在の起源を、人類という集団に尋ねないでくれ。私という存在の起源を私の中にある衝動に従って、直接、生に、死に尋ねてくれ。」
D.H.ロレンス「死」)