( ゚Д゚)<始める前から負けないためには・2

「あなたがたのほうが私よりも詳しいと思いますが、ゴダールは常に孤独だった。映画におけるゴダール的成功なるものは一度もなかったのです。ゴダールは成功をおさめたと喧伝する人たちが、「あいつは変わった、あのとき以来だめになった」とふれまわっていますが、そんなことをする者と、最初からゴダールを嫌っていた者は同一人物であることが多い。ゴダールが誰よりも先を行き、誰にでも影響をおよぼすことができたのは、成功の道を歩んだからではなく、独自の線を引きつづけ、しかもそれが積極的な逃走線となって、しじゅう途切れながらジグザグを描き、地下に潜行していったからなのです。ともあれ、こと映画にかんするかぎり、人びとはゴダールを孤独のなかに閉じ込めるのに、どうにかこうにか成功した。こうしてゴダールの蔓延がくいとめられたわけです。するとゴダールは、その空白期間を利用し、漠とした創造の呼びかけに応じて、6×2回の番組のあいだ、テレビを占拠してみせる。たぶん、ゴダールはテレビに籠絡されることのなかった唯一の人間でしょう。……いろいろな集団や団体が憤慨したのは当然です。報道カメラマン・映画人協会のコミュニケがそのことを雄弁に物語っています。ゴダールは憎悪心を焚きつけることには成功した。しかしそれと同時に、従来とは違う「密度」でテレビを占拠するのが可能だということも証明してみせたのです。」
ジル・ドゥルーズ「『6×2』をめぐる三つの問題(ゴダール)』)