( ゚Д゚)<COOL JAPAN・3

三津五郎 外人はみんな口で息するんですよ、声みたいに。あのスピード競技でよく口で息ができると思ってね。われわれは口で息したらおしまいだといわれて修行してきたんですが、あの人達は口で息してるんですよ。だからそこがヨーロッパ人種と東洋人種の違いですね。
武智 だから外国人にはそれなりの伝統があるわけでしょう、遠心力とか反動の利用とか──。それがないんですよ、われわれには。ところが今の人はなまじっか慣性の利用とか遠心力というものを学校で習って知ってるんですよ、器械体操もやらされたりして。
 だからなるべく器械体操の下手な奴はいないかとか、そういう探し方をするわけですよ、こっちも。猿之助が舞台の上であれだけ器用に体をつかうけれども、器械体操が一番下手だったんですってね。──だから器械体操ができないから、なんとなく飛びはねていても日本の芸になるんですよ。
 だから能でも狂言でも、反動を利用すればなんでもないんですよ。走り込みでも遠心力を利用してコーナー毎に体を傾けて走るなんてことをやると、花子の走り込みなんて馬鹿みたいにできちゃいますよ。それを反動を利用しないで、遠心力も利用しないで走り込むからむずかしいんで、花子が極重習いだ、釣狐が極重習いだということは、体のつかい方に反動の利用も遠心力もない、極端にいえば手を振らないで走るわけでしょう。……」
坂東三津五郎武智鉄二『芸十夜』)