( ゚Д゚)<プライドの高め方

「もちろん憎まれること自体は、もしそれに耐えられさえすれば、さほど悪いこととはいえない。英国人もかつては欧州の隣人たちから大いに憎まれ、「光栄ある孤立」を続けて来たものだ。しかし彼らは憎まれはしても、決して軽蔑はされなかった。なぜかといえば、それは彼らが自分たちの立居振舞に、ひとつのスタイルを確立することに成功したからだろうと思われる。
 スタイルというのは、なりふりかまわずというのの逆である。紳士淑女だけではなく、庶民もクリスマスごろから、翌年の夏休みにどこに行くか、どんな本を持って行って読むか、ということを考えて愉しむ、というのがスタイルである。いいかえれば、それは余裕の表現であるが、もっと正確にいえばあたかも余裕があるかのように振舞う、というところにスタイルが生まれるのである。武士は食わねど高楊枝、という肩のそげ落ちた精神主義とはちがって、このスタイルには一種の「遊び」がある。つまり、豊かであろうがなかろうが、豊かさを演じることを愉しむのがスタイルだ、ともいえる。」
江藤淳「スタイルのある話」)