( ゚Д゚)<鬚の現象学

「私の部屋に入ってくると、彼女はやにわにベッドにとびのり、ときには私の聡明さがどんな種類のものかを明確にしようとしてみたり、夢中になって、私と別れるくらいなら死んだ方がましだと真顔で誓ったりする。それはきまって、彼女を呼ぶまえに私がひげをそった日なのである。なぜ自分がこれこれのことを感じるのか見当のつかない女がいるけれども、アルベルチーヌもそうだった。こういう女たちは、さっぱりした肌のために快楽を感じても、それが将来自分に幸福を与えてくれそうな男の精神的な長所のためだと思いこむのであるが、ひげをのばすにつれてこの幸福もしぼんでゆき、必然的なものとは思われなくなるかもしれないのである。」
プルースト失われた時を求めて 第五篇 囚われの女』)