( ゚Д゚)<死体の行列

「橋詰広場に面した二階、西南地方民衆保険会社は、毎晩六時半に外交員志願者の面接をする。狭く長い、汚らしい玄関ホールのようなところに五十人ほどおしかけており、粗末な椅子の列に腰かけている。大部分は事務室の奴隷のような連中で、目当てといえば百五十フランの月給。世界の算術ではじき出した額がそれで、五年、十年あるいはそれ以上もまえから渇望してやまないものだった。それだけあれば三人目のがきのシロップをもうすこし気楽に買えるし、その子のために半ズボンを買ってやることも、日に二本余計にたばこを吸うこともできるし、もしかしたら週に二度肉も食えるかもしれなかった。彼らはおとなしく無口で、とても注意深く、一人のこらず着古した服を一着におよび、垢だらけのねずみ色にせよ、彼らの埋葬に使う霊柩車のような冴えない黒にせよ、おなじ箇所がしわくちゃになっていた。四十歳をこえたものも多く、なかには六十あるいはそれ以上の老人も何人かいた。くる日もくる日も三十五スーというおなじ問題に悩まされつづけるとは、なんという人生だろう! しかし彼らが奴隷根性の持主であることの印はあまりにも明らかなので、親愛感などはとうてい抱けない。司祭も経営者も経済学者も政治家も、慈善家も、こんな運命のまえでは口をとざすがいい! とにかく陰惨なほど論理的なこの悲惨に同情することなんかできやしない。これらの男たちに運命以上の価値があるのだったら、彼らはその運命を手なづけていたはずなのだ。」
(リュシアン・ルバテ『ふたつの旗』)