( ゚Д゚)<プルーストの時間

「『失われた時』の最初に位置する大きな三つの部分、《コンブレー》、《スワンの恋》、そして《ジルベルト》(《土地の名──土地》および《スワン夫人をめぐって》)は、誇張ではなく本質的に括復的であると見做すことができる。いくつかの単起的な情景、たとえばスワンの訪問、《バラ色の服を着た婦人》との出会い、ルグランダンのエピソード、モンジューヴァンでの涜聖行為、教会におけるゲルマント公爵夫人の登場、そしてマルタンヴィルの鐘塔付近での散歩、といったものがそれであるが、これらの単起的な情景を別とするなら──とはいえ劇的にはきわめて重要な情景であることに変りはない──、《コンブレー》のテクストが反復をあらわす半過去で物語っているのは、ただ一度起ったことではなく、規則的に、あるいは儀式的に、毎日、毎日曜日もしくは毎土曜日等に繰り返し起ったことなのである。これと同様、スワンとオデットの恋を語る物語言説も、結局のところはこうした習慣と反復の叙法で語られることになろう(ヴェルデュラン家における二度の夜会、カトレヤをめぐる情景、サン=トゥーヴェルト侯爵夫人の主宰による音楽会は、重要な例外である)。……単起法の優位が確立される(伝統的物語言説における比率がどうであったかを想起するなら、むしろ確立され直すと言うべきかもしれない)のは、最初のバルベック滞在から先のことにすぎない。」
(ジェラール・ジュネット『物語のディスクール』)