( ゚Д゚)<メタ自殺

「だがおまえは自分自身の心の中にあるものがわかっていないのだよ 一般的な真実の一部分なのだが すべての人間の顔を ベンジーの顔すらも曇らせるあの自然な出来事とその原因の連鎖というものがわかっていないのだ おまえは有限性について考えようとしないで 理想ばかりを一時的な精神状態が肉体の上に立って均衡を保ちながら 精神自身とそれが完全には捨てきれない肉体の両方を意識しているような理想ばかりを考えているのだよ だからおまえは死ぬことにすらならないだろう すると僕が 一時的ですって するとお父さんが おまえはいつかこのことがいまのように こんなにおまえを苦しめなくなるだろうと考えることに耐えられないのだ おまえは言ってみればこの経験が 顔は少しも年を取らないのに 髪の毛が一晩で真っ白になってしまうような経験だとばかり考えているようだね こういう状況では自殺などしないものだ 賭けをすることになってしまうからね おかしなことに人間というものは 偶然によって孕まれて 息を吐くたびにあらかじめ不利になるように細工されたサイコロをあらたに振るに等しいにもかかわらず いずれ直面しなくてはならないと自分でわかっている最後の重大局面にいざ直面するとなると かならず暴力から子供も騙せないようなつまらぬごまかしまで じつにさまざまな便法を試みるもので そのうちとうとうすっかりうんざりして 一か八かで目をつぶって引いた一枚のカードにすべてを賭けることになるのさ 絶望だとか自責の念だとか死別による無念だとかをはじめて激烈に感じたぐらいでは 誰もそんなことはしやしないのだよ むしろ絶望や自責の念や死別による無念というものさえ 暗黒のサイコロ振りにとってはたいして重要ではないのだとわかったときに はじめて人はそういうことをするのさ」
(フォークナー『響きと怒り』)