( ゚Д゚)<知的情報発信!

「自慰行為の唯一の積極的な効果といえば、なかには、それによって一種の知的エネルギーを放出できる人がいるらしいことである。しかし、この知的エネルギーの発現は、変り栄えのしないこと甚しく、いつもきまって分析と無力な批判、もしくは虚偽で安易な共感と感傷のなかを悪循環している。現代文学の感傷癖と、こせついた分析精神は自涜の徴候なのだ。それこそ自慰行為の表面に現れた結果であり、男女を問わず、自慰行為によって刺戟された意識活動がそれなのだ。こういう意識の顕著な特徴は、そこには対象というものがまったくなく、あるものはただ主体のみだという点である。これは小説の場合だろうと科学研究の場合だろうと同じである。作者は一瞬たりとも自己から逃がれることなく、自己の悪循環の内部を堂々めぐりする。現存の作家で自己の悪循環から抜けだしているものが一人でもいるだろうか──画家にしてもそうだ。まさにこの理由によって、現代、創作が欠如し、製作が氾濫するという現象が見られるのである。これが自我の悪循環、内部を堂々めぐりする自慰行為の結果であり、衆人環視のうちにおこなわれる自己陶酔ともいうべきものである。」
D.H.ロレンス「好色文学と猥褻」)