( ゚Д゚)<霊感詐欺

「霊感の信仰。──世の人が不意の啓示、所謂霊感というものを信ずることを、芸術家達は一大事としている、芸術作品や文芸の理念、或る哲学の根本思想が恩寵の光のように天から射し降されるというような信仰である。事実は、すぐれた芸術家や思想家の空想力は絶えまもなく、良いものや平凡なものやわるいものを生産しているのだが、極度にとぎすまされ練り鍛えられた彼の判断力が、捨てたり、選り出したり、結び合わせたりしているのだ、今はベートーヴェンのノートブックから、彼が極めて壮麗な旋律を次第次第に組み合わせ、多様な着想の中からいわば選り出して来たのだということを見てとれるように。それほど厳密に区別をつけずに、物を写しかたどる回想に委ねたがる者は、事によっては大即興家となり得るであろう、しかし芸術的即興というものは、真剣に刻苦して選りすぐられた芸術構想と対比すれば低いものである。あらゆる偉大な人は、ただ創案することだけでなく、捨て去り、篩い分け、造り変え、整えることにかけても倦むことを知らぬ、偉大な労作者であった。」
ニーチェ「芸術家と著作家の魂から」)