( ゚Д゚)<恐るべき赤ちゃん

「死に劣らず恐るべきもうひとつの危機的な瞬間、脅威がある。誕生がそれである。このため、わたしたちはここでも不安定な指示記号が介入してくるのを見る。死が直接に先祖を生み出すことはしないで、亡霊を生み出すように、誕生も直接に人間を生み出すことはしないで、幼児を生み出すのだ。幼児はあらゆる社会において人間とは区別された特別の地位を占めている。もし亡霊が生きている死者(un morto-vivo)、あるいは半分死んでいる者(un mezzo-morto)であるなら、幼児は死んでいる生者(un vivo-morto)、あるいは半分生きているもの(un mezzo-vivo)である。それゆえ、幼児も、生者の世界と死者の世界、通時態と共時態とが不連続であることの触知しうる証拠として、あらゆる瞬間に反対物に転化しうる不安定な指示記号として、中和されなければならない脅威であると同時に、一方の領域から他方の領域へと、両者のあいだの指示記号的差異を廃止することなく移行していくのを可能にしてくれる方便でもあるわけである。そして、亡霊の機能に幼児の機能が対応しているように、葬送儀礼には通過儀礼が対応しているのであって、通過儀礼もこれらの不安定な指示記号を安定した指示記号に変形するためにこそ執り行われるのである。」
ジョルジョ・アガンベン「おもちゃの国」)