「多くの自由な人間に会い、それらの人間がすぐに忘れてしまうものを、正確に受けとめて忠実に伝える人は、独白ばかり言っている哲学者より、ずっと豊かな理念をもっている。私に言わせれば、ルソーにおいては、『エミール』より『告白』のほうがはるかに理念に富んでいる。『回想録』を読んで何もひき出せないのは稀である。もし、人間を知るには何を読んだらいいかと尋ねられたなら、同じ歌を繰り返すことに没頭したラ・ロシュフーコーよりも、むしろバルザックとスタンダールを読むようにすすめる。この二人は他人の洩らした多くの言葉を集め、とり入れているのだから。」
（アラン「人間とそのさえずり」）
