( ゚Д゚)<名探偵ドストエフスキー

「それにいいですか、あなたは全然カストールスキイ氏などじゃないし、ましてや神父カストールスキイなどでもない。そんなことはすべて偽造でありナンセンスである。あなたは仮装人物だ。クリスマス週間にやるのとまったく同じ人物だ。それにまだこういうこともある。ほんの一瞬といえでも私はだまされはしなかったのだ。私は即座に仮装人物の正体を見抜き、それを自分なりに楽しみに変えていた。というのは、こちらからはあなたの長い鼻が丸見えだからだ──看板用に細工したような道化じみた仮面を私が本物の顔と受け取るだろうと、あなたは完全に信じ切っていたのだ。それにまた、知っておいていただきたいが、私がいささかなれなれしすぎるかなあという調子であなたに答えていたのも、ひとえにすぐさま扮装した人物を見抜いたからである。もしあなたが本当に聖職者であったなら、あなたの文章の終りのほうでは優越感に満ちた神学生のばか笑いのような調子にまでなっていた、あなたのあらゆる不作法にもかかわらず──やはりそれでも「法を守って」あなたにお答えしたであろう──それは何もあなた個人に対する敬意からではなく、あなたの聖職者としての高い位階と、その位階に含まれている高き理念に対する敬意からすることである。しかしあなたは単に仮装人物にすぎないのだから、その罰は受けねばならぬ。この罰をまず、どうしてあなたの正体を見抜いたかということを詳しく説明することから始めよう(ここだけの話だが、私はこの仮面の下に隠れているのがいったい誰なのかということさえ前もって推測できたのだ。しかしその名を口に出して公表することはせず、当分は伏せておくことにしよう)。そしてこのことはもちろん、あなたにとってはたいへんくやしいことであろう……」
ドストエフスキー『作家の日記 一八七三年』)