( ゚Д゚)<Death and Lovers

「クエンティン・コンプソン三世。妹の肉体を愛するのではなく、コンプソン家の名誉がちっぽけではかない彼女の処女膜によって、ちょうど巨大な地球全体を縮小再現した小型ボールが芸を仕込まれたアザラシの鼻の上に乗っているように、危なっかしく、そして(彼がよく分かっていたとおり)ただ一時的に支えられているという観念を愛した。犯すことのなかった近親相姦という考えではなく、それがもたらす永遠の罰という長老派的観念を愛した。そうすることによって、神ではなく彼みずからが自分と妹の二人を地獄へ投げ込み、そこで永久に妹を守り、彼女を未来永劫消えることのない業火の中に穢れなく留めておくことができるのだ。しかし彼はなによりも死を、死だけを愛していた。死を故意の、ほとんど倒錯的な予感として愛しながら生きたさまは、ちょうど恋をする者が、その気になって待っている、親しみを込めたやさしく信じがたい恋人の肉体に対して、愛しながらも故意に自制し、だがついには自制することではなく、それがもたらす拘束状態に耐え切れず、身を投げ出し、飛び込み、捨て去り、溺死するさまと同じだった。」
(フォークナー『響きと怒り』)