( ゚Д゚)<UNDERCURRENT・2

「種属を維持するもの。──最も強く最も悪辣な精神の者たちが、これまで最もおおきく人類を前進させてきた。彼らはくりかえし眠りこんだ諸情熱の火を──あらゆる秩序立った社会は情熱を眠りこます──燃え立たしてきた。彼らはくりかえし比較や矛盾の感覚、新しいもの・冒険的なもの・未実験のものに味わう悦楽の感覚を、目ざめさした。彼らは、意見には意見を、模範には模範を対抗させるように、ひとびとを強制した。武器をもって、境界石を掘り覆すことによって、とくに恭敬心を槍玉にあげることによってそうした──だがまた新しい宗教と道徳とをかかげることによって! 征服者を悪評高からしめると同じその「悪心」が、新しいものの教師であり説教者でもあるすべての者の胎内にある、──それがたとえもっと上品に表現され、すぐさまには筋肉を運動させず、それゆえにこそそれほど悪評をひきおこすことがないにしてもである! だがこの新しいものは、征服をくわだて古い境界石や古い恭敬心を覆そうとするものとして、どんな事態にあっても悪である。そしてただ古いものだけが善である! あらゆる時代の善人とは、古い思想の土を掘りおこし、それで収穫をあげる人間であり、精神の土百姓である。しかしついにはあらゆる土地が利用しつくされる、かくてくりかえし悪の犁頭が到来しなければならなくなる。──こんにちでは、とくにイギリスで名声嘖々たる道徳の根本的謬説があらわれている。それによると「善」と「悪」という判断は、「目的に適う」と「目的に適わない」ということについての諸経験の蓄積の結果である。それによれば、善と呼ばれるものは種属を維持するもののことであるし、悪と称されるものは種属に有害なもののことである。だが実際には、悪の諸衝動は善のそれらとそっくり同様に高度に合目的のものであり、種属を維持するもの不可欠のものである、──違うのはそれらの機能の点だけである。」
ニーチェ『悦ばしき知識 第一書』)