( ゚Д゚)<文学を生かすたった一つのやり方は

「書物を生きたものにするのは何か? いかにしばしばこの問いが起ることだろう! 答えは、ぼくの意見では、簡単だ。ある書物が生きるのは、読者から読者への熱烈な推薦を通じてである。人間に内在するこの基本的衝動を抑圧できるものは何もない。犬儒派や厭人派が何と言おうとも、人々はおのれの最も深い経験を他に分とうとする努力をやめないだろうとぼくは信ずる。
 書物は、人間が深く愛しいつくしむ少数のものの一つである。そしてその人が善人であればあるほど、自分の最も大切にする持ちものを気軽に他人にわけてやるものだ。書棚に怠けてねそべっている本は、むだにされている弾薬だ。金と同じく、書物も不断に流通させておかなくてはならぬ。最大限まで貸したり借りたりせよ──本も、そして金も! だが本において特に然りだ、書物のほうが金よりも無限に有意義なのだから。書物は単に友であるだけでなく、それによって多くの友をつくる。知性と精神とをそなえた一冊の書物を所有している人は、それによって富まされている。だがそれを他人の手へ渡してやる人は、三重に富まされることになるのだ。」
ヘンリー・ミラー「かれらは生きていて、かれらはぼくに語りかけた」)